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2011年2月 7日 (月)

人減ショックが続く

人口が減りはじめた社会、つまり人口容量の壁にぶつかった時代には、従来の人口増加社会とは異なる、特有の社会心理が浮上してきます。この背景には、次の式が示すような社会の基本構造が潜んでいます。

   P(総生産量)
   V(人口容量)=─────────────────
            
L(人間1人当たりの生活水準)

右の式は、人口容量、総生産量、1人当たりの生活水準の関係を示しています。V(人口容量)とは、文明が作り出したP(総生産量)を、L(人間1人当たりの生活水準)で割った数字である、ということです。

この式で、Ⅴが伸びている時には、Pも伸びており、したがってLも伸びています。人口容量が伸びている時代には、総生産量も伸びていますから、当然、人間1人当たりの生活水準も上昇していく、ということです。

ところが、Vが停まった時には、Pも伸びなくなっていますから、Lも伸びません。それでもなおLが伸び続けていると、Vは逆に減っていきます。つまり、人口容量が停まった時、1人ひとりの生活水準が上昇し続けていると、容量はますます減っていく、ということです。

 そうなると、上昇はともかくも、今までの生活水準を維持しようとすれば、人口を抑えることが必要です。そこで、親世代は子どもを減らし、子ども世代は高齢世代の世話を縮小していくようになります。

こうした環境下で1人ひとりの選ぶ、晩婚や非婚という結婚抑制行動、避妊や中絶などの出産抑制行動、世話の拒否や年金負担の忌避といった扶養敬遠行動は、やがて集団全体に広がって人口を減らしていきます。


 これこそ人間特有の「人口抑制装置」(詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』参照)の実態ですが、それに留まるものではありません。この傾向は人口の増減という次元を超えて、さらに社会全体の人間関係にも広がって、世の中にせちがらい風潮を蔓延させていきます。

なぜなら、世の中全体の豊かさが伸び悩む時、なおも自分だけの豊かさを広げようとすれば、他人の豊かさを奪うしかない。そこで、お互いの競争が激しくなり、それが行き過ぎると、イジメやシカトなど歪んだ形に変わり、あるいは不条理な攻撃性を増していきます。さらにそれが過激になると、他人を避けて自分だけの世界に引き籠もったり、あるいは競争に疲れ果てて自傷行為に走る人たちも増えてきます。

人口容量の伸びていた時には、人々が自意識を肥大させ、生活願望をどれだけ膨ませても、それなりに許容できました。だが、容量が伸びなくなったのに、自意識をますます膨らませた人々が増えれば、世の中は急速に息苦しくなります。必然的に競争が激しくなり、攻撃的になったり、逆に自閉的になったり、ついには脱落していく人たちも増えてくるということです。

こうした閉塞した時代の社会心理を、3つの側面から考えてみましょう。

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