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2011年2月10日 (木)

引きこもる人々

3番めの特徴は、引きこもり現象の増加です。閉塞化の進展で他人への攻撃性が強まり、圧迫度の高い社会が続いていると、他人と接触すればするほど自意識が傷つく機会が増えてきます。そこで、できるだけ接触を避けて自分を閉ざし、内側に引きこもっていく人たちが増えてきます。

ヨーロッパの中世後期にも、農村での農民の集団逃走や商業都市での乞食の増加といった現象が見られました。

 日本の江戸中期にも「無宿」という形で、閉塞社会から〝降りる〟人たちが増加しています。無宿には、乞食や物もらいなどの無宿野非人(のひにん)や、長脇差を腰に差した浪人博徒などの無宿人も含まれていますが、18世紀の中ごろから江戸や大坂などの大都市で発生し、その後半に急増して、社会不安を起こすようになりました。このため、幕府は安永7年(1778)、江戸、大坂、長崎などの無宿人を捕らえて、佐渡金山の水替人足に送り込んでいます。

他方、知識階層でも一種の引きこもり現象が起きていました。身分制度が固定化し社会全般に停滞の気配が漂いはじめた享保期以降、知識人の間でも身につけた学問や教養を生かす術がないという不満や挫折感が広まっていました。

 彼らの中から、現実への関心を捨てて、芸術や趣味の世界に自己の才能を傾注する生き方を選んだ人たち、いわゆる「文人」が生まれました。文人画の池大雅、俳諧と文人画の与謝蕪村、狂歌師で戯作者の大田南畝といった人たちで、現代風にいえば「オタク・アーティスト」です。

以上のように、歴史上の引きこもり現象は、一方では無宿、つまりホームレスを、他方では文人、つまりオタクを、それぞれ増加させています。こうした事例を参考にすると、平成20年代(2008~17)には、同様の傾向が強まることが予想できます。

 すでに昨今の世相でも、学校や職場からひとまず身を引いて、自室に閉じこもる〝引きこもり〟現象、社会から一旦降りて放浪する〝ホームレス〟現象、一つの組織に囚われない〝フリーター〟現象などが増えています。一般の生活者の間に広がっている無関心・無干渉主義もまた、同じ傾向の一端でしょう。

 さらにはこうした意識の延長線上に、先にあげた自意識の過剰が加わって、自分の好きなモノだけに執着するフェティシズムや、自分の好きな世界だけに埋没していくオタク志向も拡大しています。

こうした傾向は飽和期が進むにつれてさらに強まり、平成20年代には、仕事のない無職者やフリーターが増加し、ホームレスが増えていくことも予想されます。もっとも、その一方では、積極的にオタクを選んだ人々の中から、斬新なアーティスト、意外な発明家、大胆な起業家などが育ってくる可能性がないとはいえません。

そこまではいかないとしても、いわゆる「内向き」志向が強まってくるのは、もはや避けようがありません。

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