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2011年5月13日 (金)

文化とアートの時代へ(その2)

第2は濃縮化。従来の拡大志向に対して、2010年代の生活様式では濃縮志向が強まりました。

 江戸中期の濃縮志向は、最終的には印籠や根付といった、極小の文化を生み出しましたが、21世紀の日本でも、印籠は携帯電話に、根付はストラップに、それぞれ変身していました。

この延長線上で、エレクトロニクスを応用した極小坪庭、バイオテクノロジーを応用した新華道、ナノテクノロジーによる超小型図書館など、拡大化よりも極小化をめざす新技術が進展し、新たな機能を持った商品を創り出すとともに、感性の革命を引き起こすようなミニマムアートを生み出しました。

第3は深層化。人口減少期の文化は、ルネサンス後期や明和~天明文化に見られるように、表面的な美しさよりも心の深層の潜む、葛藤や静けの方へ、より関心を移していきます。人口容量の制約が強まる以上、外部への拡大よりも自らの内部への深化の方に関心を移していくからです。

すでに2010年代から、サブカルチャーの世界では、宮崎駿のアニメ映画『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』など、あるいはコミックやゲームの世界でも、古くからの神話、伝説、昔話、お伽話などを積極的に活用した作品が増加し、すでにいくつかのヒット商品も生まれていました。

これらの背後にあるのは、C・G・ユングの指摘した集合的無意識への回帰です。集合的無意識とは、1人ひとりの個人を超えて、日本人とか中国人とかいった集団の心の底に潜んでいる無意識的な願望のことです。通常は意識されていませんが、夢や神話やおとぎ話などの形をとって、不意に私たちの前に現れてきます。

2020年代には、このような深層文化がいっそう拡大し、精神分析や宗教的方法、五感や六感を解放する手法など、いわゆる深層心理的な次元にまで広がって、日本の文化状況を色濃く彩るようになりました。

 以上のように、2020年代の文化やアートでは、爛熟化、濃縮化、深層化といったトレンドが浮上してきました。3つのトレンドこそ、人口減少が定着していく時代を象徴する、最も基本的な感性であった、といえるでしょう。

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5章 2020年代は新田沼時代」カテゴリの記事

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